スキー最先端 of Snow-HARVEST

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茂樹に刺激を受ける

2011-02-02

榎本茂樹さん

100825_192751.jpg編集部(以下H)この度は本企画の第一号として、インタビューにご協力頂きまして有り難うございます。榎本さんは、学生時代基礎スキーで全国大会11位、ALL早稲田スキー技術選で個人総合優勝など輝かしい成績をおさめられました。その後某一流企業に就職され、その後もスキーを続け、スキーへの情熱が日に日に高まり会社を退職し、現在ではプロスキーヤーを目指し活動中との事ですね。では今日はスキー最前線という企画を通じて、榎本さんの思いを色々とお話して頂ければと思います。宜しくお願い致します。

榎本氏(以下E)
お久しぶりです。この企画に第一号として参加させて頂き光栄です。宜しくお願い致します。

■板を振らずに重心移動をメインに前半を作る

大回り

H
では早速ですが、今でもどんどん進化を続ける榎本さんの技術論からお話をお願いします。
まず、先シーズンから今シーズンのオフにかけて各種目どのような事を意識されていますか?

E
いきなりですね(笑)。
僕は全体として大事にしている事は、切り替え部分でスキーの軌道を変えないように落下する事をテーマとしています。

H
スキーの軌道を変えないというのは具体的にどういう事ですか?

E
なるべく板の軌道を変えないで落下を利用して滑ることが僕の理想です。ターン広範から次のターン前半に入るために板を山側に振って前半を作るのではなく、体を落とすことで体が板を通り越して落下しながら前半を作るイメージです。
間違えやすいのは、後半で力を抜いて、切り替え時に板を自ら引き付け、ターン前半で山側に板を持っていくような滑りです。この場合自分では板がシュッと走った気がしますが、重心移動が伴っていないので本物の板の走りは引き出せません。
100825_1951~0001.jpg
H
我々、まさにそんな滑りをしてしまっています(笑)
でも頭で分かっていてもなかなか体現できないですよね。そのあたりはどうすれば?

E
シンプルに体を落としていって、落差の有る谷回りを作らなくてはいけないんです。これは、後半で受けた圧の全部は無理だけど7割くらいを次の前半に持っていくことでもあります。つまり、切り替えでも重さを抜かない

H
なるほど。前半で圧感を7割程度というのはとても新鮮です。

E
僕は、むしろターンすべてを通して圧感を一定にするくらいのイメージでもよいとおもいます。実際はターンの後半と前半では外力が違い圧感も変わりますが。

また、昔と変わったのは重心のポイントです。昔は母指丘側に加重をして板を雪面に食い込ませていましたが、今板の性能が良いので加重ポイントを後にずらさないと板が食い込んで詰まってしまうんです。僕はむしろ外足の小指を意識して、板が詰まらないようにしている。

H
え、外足の小指側ですか?それってターンが逆方向に進んでしまいません?

E
進みません。
それと、軸を意識して板の上にまっすぐ立つことも大切です。後半のアンギュレーションは作るものではなくて、エッジを開放していく過程で自然に通るポイントだと思うんです。むかしはアンギュレーションの姿勢を自らつくりに行っていましたが、今は自然とそうなるというカタチが理想だと思います。
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小回り

H
では小回りはどうですか?

E
今までは少しは回旋操作を使っていましたが、段々と必要性が無くなって、カカト加重を中心とした前後操作が重要になってきていると思います。064732.JPGターンを通してカカトを意識していますね。低い姿勢を保って圧を逃がさないようにすることも大切で、それにはモモの筋肉が欠かせないんです。今も毎日トレーニングを続けていますよ。めちゃくちゃ孤独ですが(笑)
上半身はカカトに体重が乗る位置でキープします。その位置からカカトキックで足を外に押し出すイメージですね。なんというか伝わりにくいですが、ギュンていう感じです。

H
なるほど。ギュンですか。

E
はい。ギュンです。

H
では切り替えは?

E
小回りの切り替えは外腰に溜まった圧を抜いてやることで板が自然に動きます。このときも重心が落ち続けることが大切ですね。

H
では、最後に全体をまとめると?

E
小回りも大回りも板を振らずに、重心移動をメインにした前半を作ること、道具の進化に合わせて板を使うことが肝要です。

大回り:フィッシャー GS 選手用 188 cm R27.5
小回り:フィッシャー Progressor 165cm

■カナダで技術は一つではないことを学びました。

H
では次のテーマにいきましょう。榎本さんはカナダのウィスラーにスキー留学されていたようですが、その時のお話をお願いします。実は我々もウィスラーには2回程行った事がありまして、とても興味深いです。

E
そうですね。あの体験は自分のスキー人生にとってとても大きな経験でした。100825_2035~0003.jpg僕は、大学に入って本格的にスキーを始め、基礎スキーという土台で成長しました。ですから4年間通じて如何に形を作るかという視点でスキーに取り組んでいました。

しかし、カナダではある程度日本で基礎スキーを通じて身につけた技術だけでは滑れない斜面にたくさん出会いました。崖みたいな斜面や森の中、深いパウダー。自分が今まで滑れなかった斜面に挑んで、新しい技術を編み出していくというスキーを楽しむ原点に立ち返ることが出来たね。もう何も考えずとにかくこの斜面を滑り降りる事だけを考えて。なんとしてもこの斜面を攻略してやろうみたいな。

今はその気持ちがうまく技術選への挑戦にもつながってます。

H
カナダの人たちが日本のスキーヤーと違うなと感じる部分はありましたか?

E
カナダ人は心底スキーを楽しむことが上手いんです。スキー場全体も盛り上がっていて、例えば僕がパウダーで大ごけするとみな周りからひやかしの歓声があがるし、整地小回りで上手く滑れるとリフトの上からすごい歓声が聞こえてくる。
クリフの前で立ち往生していると、行けー!!とリフトからはやし立てられ、思わず突っ込んでバラバラになってしまうこともシバシバありました。でも現地の人はリフトで大喜びしてくれる。彼らにとってスキーは身近なスポーツで、楽しみ方も幅が広いし、スキー場は大きな遊び場なんですよ。本当に楽しい。

H
素敵な環境ですね。本当に皆スキーを楽しむっていうスタイルが自然なんですね。

E 
それとカナダではレースチームに入ってトレーニングと大会を積み重ねました。DSC00743.JPGチーム員はスキーバカばっかりで、上は60歳まで幅広いメンバーがおり、レベルも様々でした。

草大会などを通して腕を競い合いましたね。

僕は始めは日本人だし、英語も上手でなかったので周りに認められなかったですが、毎回毎回練習し徐々に認められるようになり、最後のほうにはシゲの滑りを真似をしてみようといわれるようになって嬉しかったです。

H
カナダでもストイックですね(笑)カナダで基礎スキーはあるんですか?

E
はい。ありますよ。野沢.jpgカナダでもデモの大会に参加して、優勝こそは出来なかったが現地のデモに勝ちましたね。カナダで気づいたことは、めちゃめちゃスキーが上手いワールドカップレーサーも日本の技術選の様に滑っているわけでは無いと言うことです。つまり、上手さというのは一つの技術の事、一つの滑り方の事ではないんです。

日本で上手いとされる滑りは沢山ある上手さの一つでしかないということに気がつきました。僕もいつしか幅の広い技術と上手さを求めるようになってきました。

H
カナダの体験がスキーを楽しむという原点に立ち戻らせたのと同時に、技術面でも色々インスパイヤされたようですね。

◆ SSSでは社会人になってもスキーが出来る場を作りたい

H
では次に榎本さんはカナダから帰国された後にSSS(シゲちゃんスキーストウージオ)という社会人スキークラブを立ち上げ、東京都スキー技術選手権に参加したり、温泉スキー企画をされたりしてクラブの代表としても活躍されているようですね。どのような気持ちでSSSを立ち上げたのですか?


E
SSSを立ち上げたきっかけは、自分が社会人になってもスキーを続けたいと思ったからです。PIC_0007.JPGオール早稲田の出身者の多くは卒業するとスキーを止めてしまうよね。それがすごくもったいないと思ったし、残念でした。そしてきっとそれはスキーをする場がないからだと思い、その場を自分で作ろうと思ってSSSを立ち上げることを決めました。

H
なるほど。すごく共感します。スノーハーベストと同じ気持ちだったんですね!(握手)では、SSSは現在どんなクラブなのですか? 

E
SSSは技術選というスキーの一面だけを目指しているチームではなくて、スキーを通して学生時代からの仲間と共有出来る時間を作るチームなんです。

皆で集まってワイワイ楽しくスキーがしたいし、そのうちは子供が出来たら家族で来て欲しいです。もちろん、技術選などの目標に向けてガツガツ練習することも大歓迎で、今は自分も一生懸命練習しています。

H
なるほど。素敵ですね。ではSSSの特徴は??

E
まってました。その質問。(笑)

SSSは今までのスキーチームとは違うんです。まず名前がユニークです。SAJの理事会ではストゥーディオって何?と聞かれました。司会の人がスタジオって読んで、横の方がまじめな顔をしてスタジオは「小部屋」という意味ですよねってフォローしてくれました。名前はともかく、SSSでは上手い奴が偉いとか、神的な存在だとか、そういうなんか技術偏重の宗教みたいな?(笑)チームにはしたくないんです。今までのスキー界とは違う視点からSSSを通してスキーの門戸を広げて行きたいです。

H
熱いですね。

◆ 学生には仲間を大切にして欲しい

H
それでは、今のプロスキーヤーの卵という立ち場から今スキーを頑張っている学生になにか伝えたい事があればお願いします。

E
あります!

今僕が仕事をやめてひたすらお金をためながらトレーニングするというすごく孤独な状況だから気づけたことですが、同じ目標を持って一緒に切磋琢磨し、悩み、へこみ、喜び、成長できる仲間がいることは本当に素敵なことなんです。
今の自分は本当に一人ぼっちで、トレーニングも孤独との戦い。この業界に入ると決めた時に決めた技術選に出るまでベーシックの同期と会わないという約束が恨めしいときもあります。

でも、会ったら絶対皆の優しさに甘えてしまい、自分の熱を冷ましてしまうとも思うので皆に会いたくても夢をかなえるまでは会いません。

会社を辞めてこの世界に飛び込んだからには、やっぱりプロと認められる様になるま会えないと思っているんです。
そんな自分だからこそ、やっぱり学生の皆さんには仲間がいる今の時間を大切にして欲しいと心から思います。折角の大切な時間を適当に過ごさないで、自分なりに今という時間を大事にして過ごして欲しいです。仲間と共有するものが有ればこそ、1の力が2倍にも3倍にもなるんだと今は本当に思います。頑張ってください!

H
榎本さん、今日は本当にありがとうございました!今後の活躍を期待しています。


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